楽天がNTTdocomo、au、ソフトバンクに次ぐ第4の携帯事業者になる!?

■公式サイト:https://corp.rakuten.co.jp/news/press/2017/1214_02.html?year=2017&month=12&category=corp%20ir

2017年12月14日、国内の携帯電話業界にビッグニュースが飛び込んできました。

楽天モバイルを運営している楽天株式会社が、2019年の携帯電話事業者(いわゆる携帯キャリア)参入を目指し4G用周波集の取得を目指すと表明したのです。

現在、日本国内にはNTTdocomo、au、ソフトバンクの3社が携帯キャリアとして事業を展開しており、仮に楽天が周波数取得に成功すればこれらの会社に続く第4の携帯キャリアとして事業を行う可能性があります。

携帯キャリアになるためのハードルは高い(後述)ですが、硬直化した国内の携帯キャリア事業に風穴を開けるかもしれないということで、正式発表以来多くのメディアがこの件について報じています。

現在、楽天モバイルブランドでMVNO事業を行っている楽天株式会社。

携帯キャリアへ参入することで何を目指しているのか、そしてどのようなビジネスモデルを考えているのか、現時点での情報を基に分析してみましょう。

4G周波数取得を目指すとはどういうことなのか?

現在報道されている通り、今度の周波数割当計画においては2018年の1月から2月にかけて申請受付が行われます。

総務省のホームページによると、この周波数割り当ては「周波数の再編」によって生み出された帯域を新たに携帯電話向けに開放することにより、増加する無線移動通信に対応しようというもの。

具体的には、これまで防衛省などが使用していた1.7GHz帯の公共無線用の周波数を4.5GHz帯へ移行し、その空いた周波数を携帯電話用として開放するということです。

周波数は国によって利用できる用途と帯域が厳密に管理されています。

ラジオ放送、タクシー無線、防災無線、船上無線など、特定の用途にしか利用できない帯域が定められており、それぞれの事業者は決められた帯域を使ってビジネスを行うことが義務付けられているのです。

もちろん携帯キャリアも例外ではなく、総務省によって定められた帯域を使って通信事業を行っていますが、昨今の通信データ増大に伴い既存の帯域では不足しているのが現状です。

従って、携帯電話で利用できる周波数を新たに確保するために今回再編が行われ、空いた周波数を利用する事業者を募ることとなったのです。

周波数の割当申請=取得成功ではない

やや報道が先走りしている感も否めませんが、今回楽天が表明したのは「周波数の取得申請」を行うということです。それはつまり周波数取得に名乗りを上げたということに過ぎす、取得に成功したわけではありません。

新規事業者が周波数を取得するにはいくつかの壁があります。

基準は明らかにされていませんが、相応の社会的信用と資本力を保持した企業でないと検討の土俵にすら上がりません。最終的には総務省にて「割り当て」を行いますが、結果として楽天には割り当てられない可能性も残されています。

総務省がどのような判断をするのか明らかではありませんが、過去においてはソフトバンク参入の際のドタバタ劇(ソフトバンクが総務省を提訴するetc)から察するに、新規事業者にはかなり厳しい割り当てを行うのではないかと推測されます。

今回の新規割り当てには大手携帯キャリアが3社とも申請することが見込まれています。

限られた周波数帯の「奪い合い」となるだけに、楽天の申請が認可されるかどうか(割り当てられるかどうか)は極めて不透明と言わざるを得ません。

楽天はなぜ携帯キャリア事業を目指すのか?

楽天:https://corp.rakuten.co.jp/

さて、このように参入までのハードルが高い携帯キャリア事業になぜ楽天が手を挙げたのでしょうか。

プレスリリースによると、「柔軟な携帯電話サービスの提供をひとつの目的として」参入するとコメントされています。

ご存知の通り現在楽天は「楽天モバイル」ブランドでMVNOとして携帯電話事業を行っています。

しかし、MVNOとしての楽天モバイルはさまざまな制約があり、”柔軟なサービス”を展開できるほど自由ではないということなのでしょう。

仮に周波数を取得できた場合、グループ内の別会社として携帯キャリア事業を行うと表明しました。
その上で、2019年中のサービス開始を予定、当面は1500万人以上のユーザー獲得を目指して事業を行うとのことです。

実は楽天株式会社の三木谷代表は、常日頃から「楽天エコシステム(経済圏)」の確立を強調しています。

楽天会員を中心としたメンバーシップを軸に、買い物、旅行、銀行、カード、グルメ、車など生活のあらゆるシーンで楽天のサービスを利用することで利便性を高め顧客満足度を上げるという考えですね。

もちろん携帯電話事業も楽天エコシステムの中核をなす事業です。
こういった一種の「囲い込み」により楽天のグループ力が強化されるのは言うまでもありません。

今回の携帯キャリア参入表明は、楽天エコシステムをさらに押し進めるために必要なピースであるということでしょう。

携帯キャリア事業を展開するには膨大な資金が必要

とはいえ、仮に周波数を取得し携帯キャリア事業への参入が認められたとしても、実際のサービスインにこぎつけるまでにはさらに高いハードルが待ち構えています。

それは携帯基地局をはじめとするインフラへの設備投資負担

携帯キャリアとして事業を展開するには、自前の基地局や通信ネットワークを保有しサービスを展開する必要があります。

現在の楽天モバイルが行っているMVNO事業は、一部の通信インフラを除き基本的にはNTTdocomoから「借りている」もの。
自前の設備を持たないという強みゆえに低価格でのサービス提供が可能となっているのです。

既存の携帯キャリアは多額の設備投資を行い、全国津々浦々まで網羅する通信網を構築してきました。
人口カバー率99%超えが当たり前になり、離島や山頂でも「つながる」ことが当たり前の環境になっています。

そういった既存の携帯キャリアに対抗するためには多額の設備投資が必要です。

今回の発表で楽天は「今後2025年までに銀行などから最大6千億円を借り入れて設備投資を行う」と表明しています。

6000億円がかなりの金額であることは否定しませんが、実は携帯電話のインフラ投資は莫大な資金を必要とするのです。

ビルの屋上のアンテナひとつ立てるのに1億、基地局に2~3億は当たり前の世界であり、6000億あっても関東一円をカバーするだけで精一杯でしょう。

また、NTTdocomoの2016年度の設備投資額が5971億円であることからもわかる通り、維持運用だけでもかなりのコストが派生します。

NTTdocomoの1年間の設備投資額を楽天は2019年~2025年の7年間にわたって投資するという点からも、楽天のネットワーク構築規模の”小ささ”を察することができると思います。

楽天の描く携帯キャリア事業とは?

■Yahooファイナンス:https://stocks.finance.yahoo.co.jp/stocks/detail/?code=4755.t

サービススタート当初から苦戦することが容易に想像できる楽天の携帯電話事業参入計画。

実際、プレスリリース以降、楽天の株価は大きく下落し年初来最安値を記録したそうです。
投資家から見てもかなりリスキーな事業計画であるということですね。

事業規模に対する投資額の少なさ、既存のキャリアとの競争激化によるサービス品質悪化など懸念材料も多く、第4の携帯キャリアになる道はかなり険しいと言わざるを得ません。

それどころか、携帯キャリア参入によってNTTdocomoとはライバル関係になるため、既存のMVNO事業(NTTdocomo回線を利用)のサービス停止まで視野に入ってきます。

ただ、楽天もこの程度の反響やネガティブな意見は当然想定済でしょう。その上で携帯キャリアとしての成功プランを描いているはずです。

周波数取得申請表明からまだ間もないため楽天側のビジネスモデルなどは明らかにされていませんが、以下のようなスキームであれば携帯キャリアとしての事業展開も可能ではないかと思います。

1、NTTdocomo回線とのローミング

自前のインフラを構築する傍ら、当面はNTTdocomo回線とのローミングにより通信エリアを日本全国とするという方法です。

このためにはNTTdocomoの管理者機能を開放してもらう必要がありますが、不可能な話ではないでしょう。

NTT側としても既存の設備やサービスを「買ってくれる」顧客となるため、表立って拒否はしないのではないでしょうか。

これが実現すれば、携帯キャリアとしての楽天とMVNOとしての楽天モバイルの両立も可能ですし、楽天会員の満足度向上にもつながりますね

しかし、この場合ユーザーの利用料金が既存キャリア並みになってしまう可能性もあります。企業努力でどこまで差別化を図れるかが鍵でしょう。

2、エリア限定の超高速ネットワーク

自前の基地局を大都市部に集中して設置し、エリアを限定した超高速通信を可能にすることも考えられます。

DSDS端末に楽天のキャリアSIMと楽天モバイルSIMを1枚ずつ挿し、特定エリアでは超高速通信、それ以外のエリアでは通常のMVNO通信として楽天ブランドの付加価値向上を図るのもありですね。

この場合はMVNOとしての利用料金の優位性を保持したままプラスアルファの価値を提供することが可能となります。ただし、ビジネスの発展性という意味ではあまり魅力的ではないかもしれません。

3、その他

都市部におけるビジネスユースに限定したデータ通信専用事業、移動基地局を活用した大規模イベント特化型携帯キャリア、インバウンド需要にフォーカスした観光地で使える貸出端末事業など、いくつかの方向性は考えられます。

楽天がどのようなビジネスプランを引っ提げて参入するのか、この件に関する次のリリースが楽しみですね。

まとめ

可能性はともかく、今回の楽天の市場参入のニュースは大きな驚きをもって迎え入れられました。

これにより携帯電話業界の価格競争が生まれ、ユーザーの利用料金低下につながるという見方もあります。
少なくとも既存キャリアは楽天の動向を見守りつつさまざまな価格政策を仕掛けてくることは間違いないでしょう。

楽天がどこまで本気で市場へ参入するのか、そして今現在のネガティブな評価をどのように覆していくのか、今後しばらく楽天の動向から目が離せなくなりそうです。

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この記事を書いた人

h.katsura
h.katsura
福岡出身のフリーライター。就職を機に上京し人材コンサルタントや外資系ITベンチャー企業に勤務。
20年余の東京生活にピリオドを打ち2015年に福岡へUターンしフリーライターとして活動開始。