なめ猫、ザ・ベストテン、夏色のナンシー、これらを知ってますか?

格安スマホ事業者の中でも特に業績を順調に伸ばしている会社と言えば、Y!mobileです。その勢いはあらゆる場面で目にしますが、特に顕著なのがテレビコマーシャルの露出の高さです。
ゴールデンタイムのテレビスポットではほぼ必ずと言っていいほどY!mobileのコマーシャルを目にすることでしょう。

そして、そのテレビコマーシャルの内容も特徴的です。

ソフトバンクが「お父さん犬」をメインキャラクターにして展開しているのに対し、Y!mobileは(多分おじさんであろう)猫のキャラクターを採用し、シリーズ化させています。
ここ最近のコマーシャルを思いつくまま挙げてみると

  • 1980年に流行った「なめ猫」を彷彿とさせるシーン
  • なめ猫バンドが歌う1998年のヒットナンバー、爆風スランプの「Runner」
  • 1980年代に皆が夢中になった「ザ・ベストテン」のカウントダウンボードによる演出
  • ザ・ベストテンの舞台で歌うのは1983年リリースの早見優のヒット曲「夏色のナンシー」
  • 同様に1981年のヒットナンバーである松本伊代の「センチメンタル・ジャーニー」
  • 1980年代にブームとなった「ディスコ」へタイムスリップする描写
  • 「ディスコ」で踊るボディコンワンレンの女性たち(1980年代のトレンディ女優だった田中美奈子が登場)
  • 「ディスコ」での独特のフロアDJと、1982年にリリースされディスコダンス曲の定番となったボーイズ・タウン・ギャングの「君の瞳に恋してる」
  • 猫が振り付きで歌う1979年の西城秀樹のヒット曲「YMCA」

などなど、あちこちに懐かしい要素を入れ込んできています。1980年代を鮮明に覚えている人にとっては懐かしさで悶絶するかもしれません。
逆に、最近の若者世代にとっては全く意味が分からないのではないでしょうか。何か古いネタをやってるという程度の認識で、特に共感するところはないと思います。
ところで、このような懐かしい要素を含んだテレビコマーシャルを展開してるY!mobileとはどのような事業を行っているのでしょうか?

Y!mobileの事業展開について

参考:http://www.ymobile.jp/service/others/internet/

Y!mobileを運営しているのはソフトバンクです。
2015年3月まではワイモバイル株式会社を名乗っていましたが、吸収合併によりその社名は消滅し、ソフトバンクのブランド名として残りました。

実はワイモバイル株式会社と名乗っていたのもほんの数か月です。2014年6月まではイー・アクセス株式会社として事業を行っており、ワイモバイル株式会社への社名変更とほぼ同じ2014年8月1日からY!mobileというブランド名で事業を行っています。
さらにさかのぼると、イー・アクセス株式会社が行っていた移動体通信事業は「e-mobile(イーモバイル)」ブランドです。イー・アクセス株式会社は、もともとADSL事業を手掛けていましたが、株式会社ウィルコムを吸収合併することにより移動体通信事業へ参入しています。

その株式会社ウィルコムとは、2005年までDDIポケットと名乗っていた会社です。つまり、PHS事業者としてスタートし、さまざまな紆余曲折を経て今日に至るのです。
ただし、PHS事業は既に縮小しており、ごくわずかなユーザーしか残っていません。つまり、現在では事業のほとんどが格安スマホと4Gデータ通信事業に集約されていると言っても良いでしょう。

コミコミ1,980円という料金体系にかけ1980年代を出しただけ?

話をテレビコマーシャルに戻しましょう。
Y!mobileがこのように1980年代を中心とした懐かしい要素をコマーシャルに盛り込んでいるのは、利用料金が1,980円であることをアピールするためだと言われています。
しかし、理由はそれだけではありません。

というのも、前述したテレビコマーシャルシリーズをもう一度思い起こしてみましょう。猫のキャラクター(ふて猫という名前らしいです)が登場し、西城秀樹のYMCA(ヤングマン)を歌っていたコマーシャルの時、料金はいくらだったでしょうか?
そう、「ニャンキュッパ」、すなわち2,980円でした。最初から1,980円と1980年代をかけていたわけでは無いですね。

この時はY!mobileのYとYMCAのYをかけていただけでした。YMCA(ヤングマン)は文字通り若者世代に向けた歌詞です。当時のヒット曲ではありますが、現在でも若者世代に時折歌われることもある、ある意味定番ソングでもありますので、若者世代にも目を向けているコマーシャルであることは間違いないでしょう。
それが、料金を1,980円に改定した途端、若者世代には全く縁のない要素をあれこれと取り込んできたのでしょうか?

MVNOのユーザー層は若者世代が中心

MMD研究所が2015年10月にまとめたデータによると、MVNOのユーザーは10代~30代の男女で全体の半分以上を占めているそうです。40代まで加えると7割以上であり、このデータだけでも若者世代を中心にMVNOの認知度が広がっていることが伺えます。

つまり、50代以上の層はMVNOに関心がない、もしくは知らないということになります。とはいうもの、少子高齢化の進む日本において、50代60代のボリュームは大きく、ある程度経済的にも余裕があるため、この世代を取り込むために各社ともにあの手この手でアピールをしているのです。

さて、1980年代に話を戻しましょう。
1980年代に青春時代を過ごした層は今や50代に差し掛かっています。いわゆるバブル世代と呼ばれた人達です。ザ・ベストテンのランキングに一喜一憂し、マハラジャやキング&クイーンといったディスコに夜な夜な通い詰めた世代です。

この世代に対して、テレビコマーシャルで「印象に残る」ために、1980年代の流行ものを前面に押し出して懐かしさを喚起させる手法を採用しているということですね。実際、周囲の50代の人間に聞くと、懐かしさ「どストライク」のコマーシャルとのことです。
ところで、50代60代がY!mobileの顧客層になり得るのかという根本的な疑問が浮かびます。

中高年のガラケー⇒スマホニーズを取り込む

日本におけるガラケーユーザーのほとんどは年配層です。
特に50代60代にとって、彼らが30代の頃に登場した折り畳み式携帯電話のインパクトは強く、慣れ親しんだガラケーに固執する人もいます。また、スマホにすると料金が高くなると無意識に思い込んでいる人もかなり多いのです。

また、iPhoneをはじめとした海外製のスマートフォンに対してなんとなく抵抗がある点も見逃せないでしょう。かなり高い操作スキルや知識を要求されると(実際はそんなことはないのですが)思い込んでいる人もいます。
このように、現在ガラケーを使っていて、スマホへの切り替えをためらっている層へアピールするのがY!mobileのメディア戦略ではないかと考えられます。

スマホは高いというイメージを払しょくするテレビコマーシャル、シャープや京セラといった彼らにとって安心のブランドを前面に出した製品群、簡単シンプルな操作のスマートフォンラインナップなど、あちこちに年配層に受け入れられやすい工夫を行っていることが見て取れます。

ネットに疎い層をY!mobile店舗へ誘導し拡販

もう一つ忘れてはならないのが、Y!mobileの店舗展開です。もともとY!mobileはDDIポケット時代から独自の店舗展開を行っていたため、土地や店舗は資産として保有していました。従って、多額の投資を行うことなく独自の店舗網を構築することができたのです。

この「実店舗がある」という安心感は高齢者に大きなアピールポイントになります。ネットで調べることがあまり得意でない年配者にとって、店舗で契約も相談もできるという点は3大キャリアと何ら変わらないということをアピールできるため、MVNOの中では大きなアドバンテージとなります。

このように、Y!mobileのメディア戦略には、年配層をごっそり取り込むという意図が見え隠れします。情報収集が得意な若者世代はこの先黙っていてもMVNOに集まってくるでしょう。そこにお金をかけるのではなく、テレビコマーシャルでは年配層にアピールするY!mobileのふて猫シリーズ、この先どのような懐かしい要素を盛り込んでくるのか、楽しみですね。

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この記事を書いた人

h.katsura
h.katsura

福岡出身のフリーライター。就職を機に上京し人材コンサルタントや外資系ITベンチャー企業に勤務。

20年余の東京生活にピリオドを打ち2015年に福岡へUターンしフリーライターとして活動開始。