そもそもMVNOとは何の略なのか?

格安スマホ市場を語る時に、MVNOという単語が頻繁に登場します。なんとなくわかるようでわからないMVNOという単語ですが、当然しっかりとした定義づけがあります。

まず、MVNOが何の略なのかからご説明します。
MVNOはMobile Virtual Network Operatorの頭文字を取ってつけられた名称です。

日本語では仮想移動体通信事業者と訳されます。
ここでのポイントですが、”仮想=Virtual”という単語が含まれている点に注目してください。これは即ち仮想空間や仮想現実など物理的に存在するものとは異なり、仮想的に存在するように見せかけているということです。
つまり、実在するMNO(移動体通信事業者)を仮想的に実現したのがMVNO(仮想移動体通信事業者)ということです。まだよくわかりませんね。

もう少し掘り下げて説明してみます。
ここで言う実在するMNO(移動体通信事業者)とは何でしょうか?
日本におけるMNO(移動体通信事業者)といえば、NTTdocomo、au、softbankです。

■NTT docomo  参考:https://www.nttdocomo.co.jp/

この3社が提供している携帯電話の通信サービスは日本全土をエリアとしており、日本国内の電波が届く範囲であればどこでも通話や通信が可能です。
つまり、自社の保有施設として国内全域に広がるネットワークを構築しているのです。

MNOは自社でインフラを構築している

自社の保有施設というのはどういうことでしょうか?

わかりやすくするため少し簡略化して言うと、携帯電話を使うためには電波が必要です。その電波を送受信するためには基地局と呼ばれる施設が必要です。

街中を歩くと、写真の様に高いビルの屋上などにアンテナが設置されています。これは携帯電話の基地局のアンテナであり、この基地局から3~10キロメートルにある範囲内が通話可能エリアです。
もちろん、電波なので障害物などがあれば遮断されることもありますし、他の電波の影響を受けることもあるため範囲内だから必ず使用できると言うわけではありません。

また、電波には周波数があります。

NTTdocomo、au、softbankそれぞれが異なる周波数を使用しているため、それぞれの会社が独自にそれぞれの周波数に合わせた基地局を設置する必要があります。
各キャリアによって通話エリアが異なるのはそのためです。

この基地局を使って送受信されたデータを専用通信網を使ってやり取りし、また外部のインターネット網と接続する仕組みも構築しています。
MNOと呼ばれるキャリアはこれらすべてを巨額の資金を投入し自社で揃えているのです。

MVNOは自社で通信インフラを持てない?

このように、自社で構築したインフラを使って通信サービスを提供しているのがMNOです。

では、新しくMNOとして携帯電話の通信サービスを行う会社を立ち上げたいと思ったらどうすればよいのでしょうか?
実は日本国内においては携帯電話の通信に利用できる周波数にほとんど空きが無い状態です。
つまり、事実上携帯電話市場に新規参入することができないのです。

巨額のインフラ投資が必要であるという条件ももちろんですが、それ以前に電波使用許可が下りないため新規参入が事実上NGな業界なのです。ただし、古今東西、競争の無い業界は徐々に衰退していくのは必然です。
携帯電話業界が事実上3社で寡占状態にあるのは健全とは言えません。そこで考え出されたのがMVNOという業態なのです。

これは、MNOの通信インフラを一部借り上げて、まるでMNOのような全国均一の通信サービスを提供するサービスを意味します。MVNOという業態で携帯電話市場に参入することで、マーケット全体の活性化を促し、業界内での競争を促すという取り組みの一環なのです。

従って、NTTdocomo系MVNOと言われているOCNモバイルONEなどは、NTTdocomoから通信インフラを間借りしてユーザーに提供しているということです。

MNOとMVNOの関係

MVNOは自社で通信インフラを設置する必要がないため、その分投資が少なくて済み、運営費用も低く抑えることができます。そして利用するユーザーには安い料金で通信サービスを提供できるのです。

メディアではMVNOのことを格安SIM会社ということもありますね。
MVNOの多くは実際に安い通信料金を設定したSIMを提供しているためあながち間違いではありません。厳密に言えば違いますが、日本の場合MVNO≒格安SIMと考えても問題ないでしょう。

では、MVNOがMNOの通信インフラを間借りするということを、わかりやすくシンプルにご説明します。
地主と農家の例に例えてみましょう。

【MNOの場合】

地主(MNO)は農民(ユーザー)に土地を貸し出し使用させています。
農民一人当たりに貸し出す土地は広く、その分賃借料も高くなります。

【MVNOの場合】


中間業者(MVNO)は地主(MNO)から土地の一部を借り、細かく分割して農民(ユーザー)に貸し出します。
農民一人当たりの土地面積は狭くなりますが、賃借料は安くなります。

少しはイメージしやすくなったでしょうか。

この図でいうところの中間業者がMVNOであり、地主(MNO)と土地(通信回線)を借りる(相互接続)契約をして事業を運営しているのです。どのMVNOがどれだけの広さ(帯域)を借りるかはお互いが話し合い決めています。

農民(ユーザー)の数に対して広さ(帯域)が足りないと満足に農作業(通信)ができない状態に陥ります。
また、地主(MNO)から土地(通信回線)を借りる(相互接続)には賃借料(相互接続料)が発生するため、ある程度の資金力は必要となります。

では、MVNEというのはどのような事業なのか?

話を農家から元に戻しましょう。
MVNOとして携帯電話事業に参入するためには、MNOの通信網に接続しなければなりません。つまり、MNOの通信が集まる接続ポイントまで専用回線を引く必要があります。
それ以外にも、以下のような業務を行うための設備を揃えなければなりません。

  • ユーザーに対する課金システム
  • ユーザーひとり当たりの月間データ量を監視するシステム
  • ユーザーの疑問点に対応するコールセンターやテクニカルサポートセンター
  • SIM発行のためのシステム
  • セット販売するスマホの調達

これらはMNOから借りることはできないため、自前で多くの投資を行わなければなりません。従って、MNOほどではないにせよ、それなりの資金がないとMVNO事業を始めることができないのです。

同様に、MNOとのタフな回線相互接続交渉も行わなければなりません。相応のスキルを持った人員体制を必要とするのです。これでは、せっかくベンチャー企業がユニークなサービスで市場へ参入しようと考えても無理な話です。

そこで近年、MVNEと呼ばれる事業者が脚光を集めています。
MVNEとはMobile Virtual Network Enablerの略であり、仮想移動体サービス提供者と訳されます。
このMVNEは上記に挙げたようなシステムや交渉事を必要に応じてすべて引き受け、MVNOの立ち上げ支援を行う会社です。

単にコンサルティングだけを行うこともあれば、MVNOに必要なシステムインフラや端末調達業務などをそっくりそのままレンタルすることもあるのです。

つまりMVNOとMVNEの違いとは?

MVNOとして参入しようと思っている企業は、MVNEの助けを借りれば小資本でMVNO事業に参入することが可能になります。自前でシステム投資や人員確保を行うことなく、必要なものをレンタルし、かつコンサルティングを受けることで容易に参入できるのです。
再度、農家のイメージで見てみましょう。

【MVNEの場合】

中間業者=MVNE、その右側がMVNOです。

MVNEがめんどくさいことをすべて受け持ってくれるため、MVNO側としては、付加価値の提供に労力を割くことが可能となります。つまり農機具も一緒に貸し出すことや、定住できる家をつけて貸し出すというような付加価値をつけてサービスを提供するが可能となるのです。
このMVNEの誕生により、多くの企業が小資本でMVNOに参入できる土壌が整ったのです。そしてMVNO間で価格だけでなくユニークなサービスや個性的な料金プランで競争する環境が実現しました。

国内MVNOとMVNEの関係性

現在、国内格安SIM市場には多くのMVNOが誕生しています。TSUTAYAやLINE、楽天など、これまで通信インフラ業にあまり縁のなかった企業はもちろんのこと、資本金1000万クラスのベンチャー企業も続々とMVNOを開始しています。
これらの動きにMVNEの存在があるのは前述の通りです。
では、国内のMVNEにはどのような企業があるのでしょうか?
そこで、国内大手MVNEとその支援を受けているMVNOをいくつかご紹介いたします。

1、OCN

OCN(NTTコミュニケーションズ)は、自身がMVNO事業を行うと同時にMVNE事業も行っています。
NTT系であるため、主に同じNTT系列の企業が手掛けるMVNO事業を支援しています。当然NTTdocomo系の回線を利用しています。
【主な支援先】
ぷららモバイル/ASAHIネット/NifMo /@モバイルくん。など

2、IIJ(インターネットイニシアティブ)

OCNと同じく、自らMVNO事業を行うと共にMVNE事業も行っています。個人向け法人向けともに高品質の通信インフラサービスを提供している同社だけに、MVNEとしての品質も高いのが特徴です。
【主な支援先】
DMM mobile/wonderlink(Panasonic)

3、 InfoSphere

NTTPCコミュニケーションズが運営する法人向けプロバイダ及びインターネットVPN事業がメインでしたが、法人向けの安定した通信品質を活かしてMVNE事業を行っています。
【主な支援先】
楽天モバイル

ここに挙げた3社以外にもMVNE事業を行っている会社はあります。
少し前にsoftbankとの相互接続交渉で名前が出た日本通信もMVNE事業者です。

関連記事:2017年にはいよいよソフトバンクの回線も解放されるかもしれない

なお、softbankと日本通信の交渉の進展については次回の記事にしますのでお待ちください。

2/11追記2月1日付で日本通信がソフトバンクと相互接続で合意した事が発表されました。
以下、関連記事をご覧ください。

関連記事:日本通信がフトバンクのMVNOを開始決定。これまでの流れと今後

まとめ

日本国内のMVNO(≒格安SIM販売会社)は100社を超えると言われています。
これだけ多くの企業が市場に参入した理由については、今回説明したMVNEの存在を抜きにしては語れません。今後も多くの企業がMVNO市場に参入すると推測されており、市場全体の拡大をさらに後押しすることになりそうです。

ユーザー側から見ても、MVNOの選択肢に価格以外の要素が加わることは大いに歓迎されるでしょう。
プラン選択の幅や決済方法、あるいは特定のアプリに関するデータ通信をカウントしないプランなど、各MVNOが独自色を打ち出していけるのも、MVNEがめんどくさい業務を引き受けているからに他なりません。

今後、各種報道でも話題となったとおり、MNOの中で唯一相互接続を行っていなかったsoftbankもMVNOあるいはMVNEに回線を貸し出すことになります。
より多くのユーザーがMVNO(≒格安SIM販売会社)に興味を持つこととなるでしょう。

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この記事を書いた人

h.katsura
h.katsura

福岡出身のフリーライター。就職を機に上京し人材コンサルタントや外資系ITベンチャー企業に勤務。

20年余の東京生活にピリオドを打ち2015年に福岡へUターンしフリーライターとして活動開始。