量販店店頭で無料配布されているパンフレット

MVNO各社が量販店店頭における販促に力を入れ始めています。特に大手家電量販店では専用コーナーを設けて加入者獲得に力を入れていますが、対面販売のみならず販促物にもさまざまな工夫を凝らしていることをご存知でしょうか。
今回店頭にて入手した写真の「はじめての格安スマホMAGAZINE」ですが、どこのMVNOが発行しているものなのか、表紙からはまったくわからない作りになっています。
この表紙や表紙に書かれている記事内容を見ると、量販店が格安スマホ拡販のためオリジナルで発行しているパンフレットかなと思えるようなデザインですね。

他社とは明らかに異なるコンテンツ構成

実はこのパンフレット、MVNO大手のUQmobile(UQコミュニケーションズ株式会社)が発行している販促用パンフレットです。全26ページで構成されており、カラフルな色使いやCanCan専属モデルを使った解説など、比較的若い女性をターゲットとしているように思えます。

通常、大手キャリアを含めた各社のパンフレットというと、最初の方で最新機種ラインナップや自社の料金プランを前面に押し出し、後半で料金シミュレーションやオプションについて説明しているというのが基本的な作りです。しかし、このパンフレットはこれまでの常識を覆す構成になっており、単純な読み物的コンテンツが充実しています。
そもそも1企業が作っている販促用パンフレットだとは思えないのです。

前半ページは「どのくらい安くなるのか」の解説が中心

読み物的コンテンツと言った理由ですが、それはこのパンフレットを1ページ目から読み進めていくと分かります。

格安スマホに乗り換えるとどのくらいお得になるのか、LINEやFacebookは使えるのかといった疑問に対するQ&Aなどが続き、ようやく7ページ目ではじめてUQモバイルの文字が小さく登場します。つまり、前半部分はUQモバイルの宣伝色を一切消して、格安スマホ初心者に向けた「安心感」の創出にページを割いているのです。

この前半部分における具体的なメッセージですが

  • 通話はあまりしない。SNS中心のコミュニケーションであるユーザー
  • 毎月の利用料金を抑えたいと思っているユーザー
  • 動画コンテンツはあまり見ないユーザー
  • 電話番号を変えたくないユーザー

これらの意向を持ったユーザーであれば、(UQmobileに限らず)格安スマホが向いていることを啓蒙する記事になっており、格安スマホ未経験のユーザーの興味をぐっと惹きつける効果があります。
そしてこのパンフレット、デザインこそ若い女性向けではありますが、より幅広い層をターゲットとしていることが次のページ以降で判明します。

世代別に利用シーンを想定したシミュレーション

もう一つ、このパンフレットに惹きつけられる点をピックアップしてみます。

大手キャリアのパンフレットやMVNOの料金サイトには、必ずと言っていいほど他社との料金比較シミュレーションが掲載されています。このシミュレーション、よくよく見ると比較対象となる他社サービスが通常ではありえない高額プラン契約になっており、逆に自社サービスは最も安いプランを出して「ほら、これだけ安くなりますよ、お得でしょう?」とアピールするケースが多いものです。
賢明な方ならまず騙されませんが、格安スマホ初心者にとってはその金額差が大きなアピールポイントに映るようです。

その意識を持ってこのパンフレットを眺めてみると、少なくとも比較対象となる他社プランはごくごく標準的な利用シーンを想定しています。一例として夫婦2人の乗り換えシミュレーションを挙げてみますと、

◇乗り換え前
夫・・・カケホーダイ+データ5GB=8,000円/月
妻・・・カケホーダイ+データ2GB=6,500円/月
夫婦合計14,500円/月を比較対象としています。とても現実的な比較対象だと言えますね。
※実際にはSPモードや家族割があるため多少前後します。

◇乗り換え後
夫・・・180分の無料通話+データ6GB=2,980円/月
妻・・・90分の無料通話+データ2GB=1,980円/月
夫婦合計4,960円/月が乗り換え後の料金として提示されています。

通話時間に制限があるのが比較対象としてマイナスではありますが、UQmobileには通話し放題プランが無いため仕方ないと言えます。むしろ、音声による通話よりもSNSによるコミュニケーションが全盛である今、通話時間はさほど必要がないというのが現実ではないでしょうか。
なお、決して夫婦間の会話が無いという意味ではありません。

また、この料金シミュレーションはその後も「独身OL編」「50代男性編」と続きます。
ここで注目したいのが「50代男性編」のシミュレーション。

この場合、乗り換え前はドコモのガラケーを使っているという設定です。そして格安スマホに乗り換える理由が、「老眼が進むとガラケーでは画面が小さすぎて見えない」という理由付けがなされていること。50代あるあるですね。
また、スマホ購入をきっかけにFacebookを初めて、学生時代の懐かしい友人とつながったというエピソードも紹介しています。

もちろん、ドコモのガラケー料金が6,000円/月という現実的な設定がなされており、格安スマホだと1,980円/月(90分の無料通話+データ2GB)であり、十分検討対象となるでしょう。

実際の申し込み方を写真で解説

料金シミュレーションの後は実際の申し込み方法の解説ページが登場します。

UQmobileの場合ネットでの申し込みも受け付けていますが、このパンフレットでは店頭申し込みに誘導しています。その理由として、やはり初めての格安スマホに対する「不安」を払しょくする狙いがある様です。

申し込み手順の中には「店員に相談して」や「店員のアドバイスにより」といった言葉が数回登場します。そして、3大キャリアで申し込むのとそれほど手間が変わらないこともアピールしています。

つまり、このパンフレットの目的として、初めて格安スマホを利用する人に対して以下の認識を持ってもらうことに注力しているのです。

  • セースル色を消して格安スマホ全般に対する不安を取り除くことを優先する
  • どのくらい安くなるのか現実的なシミュレーションで啓蒙する
  • 利用アプリや通話エリアなども3大キャリアと差がないことをアピール
  • 申し込み手続きや利用トラブルなども対面で行う安心感がある

このパンフレットの半分以上のページを使って上記のことを格安スマホ初心者に理解してもらい、格安スマホへの心理的ハードルを下げることを狙っているのですね。

実際、UQmobileの料金プランの説明は最終ページに見開きで掲載されているだけです。最新機種の説明ですら4ページ分しかありません。
宣伝担当者であれば、コストを気にして機種ごとに両面カラーのチラシと料金説明のリーフレットで済ませることを考えるのでしょうが、このようなユーザー啓蒙パンフレットを作ってしまうあたり、本気度が違うと認識せざるを得ません。

UQmobileが狙うのは会社を決めかねている乗り換え初心者

冒頭でも書いた通り、MVNO各社は店頭での受付を強化しつつあります。華やかなディスプレイに惹かれ、「格安スマホに少し興味があるけど良く分からない」人達が興味半分で立ち寄ることが増えてきています。そんな中、販売員も格安スマホの説明に時間を取られ、人手不足も相まって十分な接客ができているとは言い難い状況です。
そこでふとキャリア色を消したこのパンフレットを目にするとどうでしょうか。初めての乗り換えを親切丁寧に説明しているという点や、他のパンフレットは機種の説明や料金の説明ばかりである中、かなりわかりやすく親しみを持つことでしょう。
時間帯によっては、販売員がこのパンフを基に格安スマホの仕組みを紹介している場面も目にします。

まだどのMVNOにするか決めかねている人はもちろん、ちょっと興味がある乗り換え初心者に強くアピールできるこのパンフレット、迷っている人をごっそり取り込むというUQmobileの狙いを的確に表現していると言っても良いでしょう。
このパンフレットを手に取ってしまったユーザーは、乗り換えの際にまずUQmobileを筆頭に検討すること間違いなしですね。

この記事を書いた人

h.katsura
h.katsura
福岡出身のフリーライター。就職を機に上京し人材コンサルタントや外資系ITベンチャー企業に勤務。
20年余の東京生活にピリオドを打ち2015年に福岡へUターンしフリーライターとして活動開始。